みなしごと医療・1

CLUBみなしごブログ,生きている間

先日、あるみなしごさんから興味深い話を聞きました。テレビ番組で、身寄りのない人が病気やケガで救急搬送された際、付き添いや連絡先となる人が見つからず、病院側が対応に苦慮する事例が紹介されていたそうです。

「自分はどうなるのかと心配になりました」

近年、親族との関係が途絶え、配偶者も子どももおらず、頼れる身内がいない人は決して珍しくありません。みなしごに限らず、高齢化と単身世帯の増加が進むなか、この問題は特別な人だけの話ではなくなっています。

救急車は付き添いがいないことで搬送を断ることはありません。とはいえ、病院に到着して治療が始まると、意識不明の患者の身元確認、家族への連絡、手術や治療方針についての相談、入院手続きや退院後の生活支援など、思いのほか多くの場面で「本人以外の誰か」が必要になります。

家族がいない

「あなた」が入院したとき、配偶者や子ども、兄弟姉妹などの親族が緊急連絡先や保証人として対応してくれるでしょう。しかし法律上、必ずしも親族である必要はないようです。実際に、友人や知人、支援団体の担当者に連絡先をお願いする方もいます。

私もみなしごの一人ですが、がんで入院した際、緊急連絡先は友人にお願いしました。重要なのは、緊急時に連絡が取れ、本人の情報を伝えられる人がいるかということのようです。

さらに大きな問題は、本人が意思表示できなくなったときです。たとえば大きな手術を受ける場合や、延命措置や治療方針を決定する必要が生じた場合、医療者は本人の意思を最優先するでしょう。一方で、本人が意識不明で判断能力を失っている場合には、家族や保証人などが本人の考えを推定しながら医療者とやり取りすることになります。

第三者に委ねる

そこで近年注目されているのが、身元保証会社や終活支援サービスです。
身元保証会社は、入院時や介護施設入所時の保証人代行を行い、緊急連絡先を引き受けたり、入院中の支援や死亡後の手続きを担うことがあります。
また終活支援団体の中には、見守りや死後事務委任契約、遺品整理まで含めて支援してくれるサービスもあるようです。

一方で、この分野はまだ十分な制度整備が進んでいるとは言えません。高額な契約やサービス内容をめぐるトラブルも報告されており、利用にあたっては慎重な情報収集が必要だと、これもみなしご仲間から教えられました。

成年後見制度、地域包括支援センター、社会福祉協議会なども、みなしごを支える大切な社会資源となり得ます。しかし実際には、必要になって初めてその存在を知る人が少なくないようです。

私は、この問題を考えるたびに、マイナンバーカードの活用の可能性を思います。現在は健康保険証として利用され、医療情報との連携も進んでいます。しかし、単身者の多い社会において本当に必要なのは、「この人に何かあったとき、誰に連絡すればよいのか」という情報ではないでしょうか。

緊急連絡先、身元保証会社との契約情報、成年後見人、かかりつけ医、服薬情報やアレルギー情報、さらには延命治療や臓器提供に関する意思表示などが、本人の同意のもとで登録できれば、救急搬送や入院時の混乱はかなり減るように思います。

安心して生きるために

高齢化社会において議論されるのは、年金や医療費ばかりではありません。むしろ重要なのは、「この人に何かあったとき、誰が意思を引き継ぎ、誰が支えるのか」という問題ではないでしょうか。

この問題は、みなしごだけの問題ではありません。親を見送り、配偶者を亡くし、子どもが遠方で暮らす。そんな状況は誰の身にも起こり得ます。病気や事故はある日突然やってきます。そのとき、病院から連絡を受ける人がいたとしても、その人が「自分の意思」を代わりに伝えてくれる人だとは限りません。この問題は、個人だけの問題でなく、誰もが長寿を迎える時代だからこそ生まれた、社会全体の課題のように思うのです。

(文責:R)

Posted by CAFIC池袋