受験シーズンもいよいよ佳境に入りました。
受験生の親からは、生活、時間、労力、お金を注げる限り注ぎ、鬼気迫る勢いで子どもの受験にかけている様子がうかがえます。
一方、当事者である受験生からは、「受験に失敗したら、人生が終わる」かのような悲愴感が漂っています。
競争格差社会がすっかり定着し、少子化にも関わらず相変わらずの学歴偏重主義が続いています。そうしたなかで「コスパ」や「タイパ」が重視され、「最小限の出費で多くの利を得たい」、「生産性の高い生き方こそ賢い」という社会の風潮も鮮明になってきました。
カウンセリングでも、受験をめぐる葛藤、悩み、親子関係の不調等々は避けて通れないテーマです。
息苦しい“今”を笑い飛ばす

そんな息苦しい“今”を生きている私たちを笑い飛ばすような本に出会いました。『間違う力』(高野秀行著・角川新書)です。
著者はノンフィクション作家。「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをし、誰も書かない本を書く」(高野氏X)がポリシーだそう。高野氏の素地をつくったのは、早稲田大学での探検部での経験でした。
高野氏は、大学時代、探検部の遠征隊を率いて中央アフリカに生息するとされる伝説の未確認生物「モケーレ・ムベンベ」を(真面目に)探しに行きます。
ゴールデン・トライアングルで行った「住み込み式ケシの実栽培取材」の過程では、ミャンマーの最大の少数民族シャン人の独立闘争運動に(うっかり)関わるという「寄り道」も経験しました。
そしてこうした(たくさんの)「だれもやらない、書かない」ことを本にし続けてきたのです。
行き詰まったときに読みたい本

彼の本からは、「コスパ」や「タイパ」に縛られ、「寄り道」や「回り道」「迷い道」を悪しきものと考えて、すぐに結果が出ないものを「無駄」と切り捨てることが、「いかにもったいない生き方が」が伝わってきます。
受験に限らず、うまくいかなかったこと、失敗したと思ったことも、ぜんぶ大いなる経験。「回り道」をしたからこそ、たどり着けた風景が広がっているのだと教えてくれる人生に行き詰まったときに手に取りたい一冊です。
Posted by 木附千晶





















