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CAFICのミーティングの中でも、いちばん最初に始まったのはスーパーバイザーである斎藤医師の著書を読む「精神科医・斎藤学氏の著書を読む会」です。

ほぼ毎回、参加の固定メンバーもいますし、「時間があったら顔を出す」というメンバーもいます。

読書会と言いながら、著書とはまったく違う方向に話が転がり、盛り上がる! ということもしばしばで、さがなら自助グループのようなときもあります。

独特の「斎藤節」に惹かれて

なぜそんなに盛り上がるのか? 簡単に言えば、みんな斎藤医師のファンだからです。

ある参加メンバーは、「多くの精神科医や心理の専門家らが多数の著書を執筆しているけれど、斎藤先生の文章はどこか違う。具体的には説明できないけれど、すごく(胸に)刺さる!」と言っていました。

私も同感です。言葉のチョイス、ちょっとした言い回しの仕方、使うフレーズなど、端々に、他のだれも書けない「斎藤節」を感じます。少し(うんと?)文学的で、哲学的。昨今の「読みやすさ」を重視した書籍とは一線を画す、斎藤医師ならではの、難解さというか、謎解きのような文章が魂をわしづかみにし、心が引かれます。

まるで催眠療法を受けているかのように、こちらの思考を混乱させ、読み手を未知の世界に誘うことも上手です。

「齊藤學チャンネル」

そんな斎藤医師がYotubeを始めました。
そこでもやはり「斎藤節」は健在で、「いったい何を言っているのだろう?」と思わせる謎を投げかけて、斎藤ワールドへと引き込みます。

ご興味のある方は、ぜひ「齊藤學チャンネル」を一度ご覧ください。

固まった思考が、一気に溶け出すかもしれません。

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「顔パンツ」という言葉を知ったとき、衝撃とともに妙な納得感に襲われました。

新型コロナウイルスの感染対策だったはずのマスクですが、常態化し、すでに「マスクを外したくない」、「マスクを外すのは、人前で下着を脱ぐのと同じ」と考える人が増えているというのです。

乳幼児の発達も機具される

オミクロン株が猛威を振るった22年夏。日本は4週連続で世界最多の新規感染者数を記録し、10代以下にも感染が拡大しました。

乳幼児でもマスク着用が当たり前になりました。感染を心配するのと同じくらい、マスクが子どもの発達に与える影響を危惧する声もあります。視覚野や聴覚野は就学前にかけて発達し、他者の表情や口元を見て真似ながら感情や共感能力、言葉などを修得します。濃密な身体接触も脳の発達には欠かせません。

マスクへの精神的な依存

そして心配されたのが、マスクへの精神的な依存です。冒頭でも書いたように、すでに「顔パンツ」とまで呼ばれるマスク。10代ではそのマスクを外すことへの抵抗が大きくなっています。

調査会社・日本インフォメーションによると、「コロナ収束後もマスクを使用するか」の質問に対し、10代は男女とも約5割が「いつも必ず使用」か「できるだけ使用」と回答(『東京新聞』22年5月10日)。その理由は「かわいい、きれい、かっこよく見える」が最多。これはもう。感染対策のためのアイテムではありません。

マスクは“諸刃の剣”

もともと日本人は他者の目を気にしやすく、社会不安障害になりやすいとも言われています。最も発症しやすいのは10代半ば。容貌や本心を隠せるマスクは、他者の目から自分を守ることができる一方、生き生きとした“本当の自分”を覆ってしまう諸刃の剣となりかねません。

“本当の自分”を隠したままでは、だれかときちんとつながることは難しくなります。

どうかコロナが収束しますように

それでなくとも、小中高生の自殺が増加し、小学5年〜中学3年の1〜2割にうつ症状が見られるのです(『日経新聞』22年5月6日)。
マスクによって、さらに人との関係性がつくりにくくなるのではないかと心配になります。

どうか来年はマスクを外し、触れ合いながら子どもたちが遊べる環境に戻りますように。コロナが収束しすることを心より願っております。

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CAFIC立ち上げから2度目となる年末です。年末年始もコロナの影響は免れそうもなく、「第6波の襲来」と言われる中で迎えています。思い返せば、CAFIC開室は、第1波のまっただなかでした。

緊急事態宣言、外出自粛、ステイホームにテレワーク。マスク生活を強いられ、人との接触、関わりは“悪”とばかりの毎日。不安や孤独・孤立、怒りは少しずつ鬱積し、私たちの生活を蝕んでいます。

たとえば、孤立・孤独によってうつが増加しました。経済協力開発機構(OECD)によると、2020年の日本国内でのうつ・うつ状態の人の割合は、17.3%。2013年調査の7.9%から約2倍になりました(『東京経済ONLINE』21年10月11日)。

若年層への影響が深刻

若年層となると、さらに影響は深刻です。

国立成育医療センターが20年末に行った調査では、小学4~6年の16%、中学生の24%、高校生の30%に中等度以上のうつ症状が見られ、自殺や自傷を「ほとんど毎日考えた」小学4年生以上は6%だそう。

厚生労働省自殺対策推進室が発表した『令和2年中における自殺の状況』(21年3月)では、10~20代の自殺の増加も顕著です。従来から日本では10代の死因一位は自殺となっていて、世界的にもめずらしく問題視されてきました。それが今回は過去最多の777人(前年比118人増)になりました。

また、文部科学省がまとめた小中高生の自殺は前年より140人多い479人で、大学生を含む20代の自殺も前年より404人多い2521人でした(『東京新聞』21年2月17日)。

家族に向かうストレスや怒り

外に出られないことでたまったストレスや怒りは家族に向かうようにもなりました。20年度のDV相談件数は19万30件で、19年度の11万9276件から大幅な増加となっています(20年度DV相談件数速報値)。

性暴力被害等から少女を守る活動をしている一般社団法人Colabo(コラボ)には、外出自粛で親と距離を置くことが難しくなったり、アルバイトが減って生活費を稼げなくなるなどして、逃げ場を失った少女たちからのSOS相談が多く寄せられています。19年590人から20年度には約1500人に跳ね上がりました(『生活と自治』21年6月号)。

日本精神保健福祉協会が始めたメール相談にも、親からの暴言や暴力、理不尽な要求や束縛に「親を殴ってしまうかも」との声が寄せられています(『東京新聞』21年8月29日)

家族関係の悪化

カウンセリングの中でも、家族関係の悪化という話を多く聞くようになりました。良くも悪くも会社や学校が忙しく、顔を合わせる機会が無かったがために、なんとなく“流して”こられた不満や考え方の違いなどが、浮き彫りになりました。

最初は薄紙が挟まったくらいの亀裂だったものも、重なれば大きな溝になります。今まで時間や空間を共有しないことでやり過ごしていたものが、見過ごせないものになってしまったりします。

変化はチャンス

でも、もしかしたらそれはよりよい関係を築いていくための機会なのかもしれません。家族療法では、あらゆる変化は「良いもの」ととらえます。一見、悪い事態に見えることも、膠着した状態が動いたという意味では、新しい風を吹き込むチャンスでもあるのです。

CAFICでは、コロナ禍であっても子ども・おとな・家族が、よりよい関係、人生を紡いでいけるよう、22年もまた新しい試みを行っていきます。

みなさま、どうぞよいお年をお迎えください。

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COVID-19

緊急事態宣言や東京アラートは解除されても、コロナ不安はなかなか払拭されません。「いつ第二波が来るのか」と家から出られず、「外はコロナがいっぱいだ」と怯え、外出した家族を「コロナを持ち込むのか」と責める。・・・そんな話も耳にします。

前にも書いたように、対象がはっきりしている恐怖とは違い、不安という感情は何をやっても、どんなことをしてもつきまといます。

漠然と不安を抱えるのではなく、

①いったいコロナのどんなところが、どんなふうに怖いのか
②それについて客観的な対処方法があるのか
③自分はそういった対処法を取っているのか

などと恐怖の対象について具体的に考え、書き出してみましょう。

苦手な上司への対処方法と一緒

叱責

たとえば苦手な上司への対処方法などと一緒です。ただ「あの上司は怖い」「どうにか会わないように過ごしたい」と思っていると、「もし、ああだったら」「次にこんなことをしたら」などという妄想ばかりが広がって、不安はどんどん増すばかりです。

そんな事態を避けるには、「自分は上司のどんなところが怖いのか」をはっきりさせ、恐怖を取り除く具体的な方法を考えることが有効です。

たとえば「時間に厳しい」上司なら、遅れないためにはどんな努力をすればよいのかを考えます。「口が悪い」上司なら、その上司は自分にだけそんな口調なのか、などと考えてみることで、上司へのとらえ方が変化したりもします。

「コロナとどうつきあうか」

そもそもこれだけ世界中に蔓延しているコロナです。「自分だけは絶対に触れないで過ごそう」とすること自体がナンセンスかもしれません。

私たち人類は、過去にも多くの感染症や破滅的な戦争を乗り越え、生き延びてきました。

その現実を踏まえたうえで、確実に私たちの身近にあり、いつ、だれが、どこで感染してもおかしくないコロナと「どうやってつきあっていくのか」。そういった見方に転換してみるのも、コロナ不安から抜け出す一助にはならないでしょうか。

リフレーミング(reframing)

このように物ごとを見る枠組み(frame)を変えて、別の枠組みで見直すことを心理学の世界では「リフレーミング(reframing)」と呼びます。

逃げようとすればするほど、得体の知れない不安は追ってきます。だったら逃げるのではなく、いっそのこと「それと共にどうやってやっていくか」と考えるのも、ひとつの方法です。

何も特別な話でありません。他の病気や災いと同じことです。

「病になったから不幸」とうつうつと過ごすより、「病と共にいかに豊かに生きるか」と考え、自分らしい人生を選び取って行く。そのほうが人は何十倍も幸せに暮らしていけますし、幸福感は免疫力も高めます。

もしかしたら、それがコロナに負けない人生につながるかもしれません。

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感染不安

コロナ不安が広がり、体調を崩す人が少なくありません。

「自分はコロナにかかって死んでしまうのではないか」
「自分や家族が感染してしまったらどうしよう」
「いったいどこにコロナがあるのかと思うと、外に出るのが怖い」

相談のなかでも、そんなことをつぶやく方がいらっしゃいます。

不安」を感じるのはもっともなのですが、これはなかなかやっかいな感情です。
恐れている対象がはっきりしている「恐怖」とは違って、「不安」の対象は漠然としています。そのため対処のしようが無く、また何をどこまでやっても安心することができないのです。

不安と恐怖を分けて

不安

世の中には、出所もよく分からない、真実かどうかも見極めづらい、人を不安にさせる情報が飛び交っています。
「『安心しよう』とネット情報を集めれば集めるほど不安になってしまう」という負のスパイラルに陥りがちです。

まずは不安と恐怖をきちんと分けましょう。恐怖にはきちんと対処できるよう、情報を集めることも大切です。

そのときには、情報に飲み込まれないよう、「私はこのことを知りたいのだ」という意思を持って情報に触れましょう。たとえ専門家や政治家と呼ばれる人の話であっても、「これはこの人の立場から見た1つの意見に過ぎない」と批判的な視点を持って見ることも重要です。

それが難しいなら、思い切って「SNSから離れる、コロナ関連のニュースは見ない」ようにするのも一案かもしれません。

「日常性の連続」の分断

それでなくとも私たちは、不安を感じやすい状況に置かれています。

マスクの買い占めに始まり、トイレットペーパーなど日用品の不足。非常事態宣言による大型店舗の休業や閑散とした駅の構内や真っ暗な飲食店街。そして“自粛”という名の行動制限は、私たちから日常の楽しみを奪い、「一日中、家族が同じ屋根の下にいる」というような“非日常”をもたらしました。

そうして、私たちが安心して暮らしていくための生活の基盤を大きく揺さぶったのです。

私たちが安全感を持って生きていくめには、一定の秩序と連続性が必要です。「今日は昨日の続き」で、「明日もきっと今日と同じような一日だろう」という予測可能な日常性が無くてはなりません。

戦争や災害をはじめ、自分の身の危険を感じるような体験などが大きなトラウマとなるのはこうした「日常性の連続」が分断されてしまうからです。

濃厚接触無しに健康は保てない

そんな時だからこそ、「StayConnected」。実はこれ、山田養蜂所の新聞広告(『東京新聞』2020年5月24日)に載っていたフレーズでした。

「ウイルスに負けず健やかに暮らす、その羅針盤となる5つのこと」のひとつが「つながりを保とうStayConnected」だったのです。

「三密を避ける」「ソーシャルディスタンスを取る」「人との接触を避け、人と会うとにはマスクを」などが推奨される昨今、意識的に人とつながろうとすることが大切です。

ほ乳類であり、霊長類である人間は、本来、濃密な身体接触、人間関係無しに健康に生きることはできません。つながりが薄れていけば、人は不安や抑うつ状態になりやすくなり、体長不良にも陥りやすくなります。

どうやってつながりをつくるのか

オンラインの飲み会、オンライン授業、テレワークなどがにわかに盛んとなり、「新しい生活様式」として定着しようとしています。

買い物をするときも、駅を通り抜けるときも、病院などの受付でも、一枚の透明なビニールやアクリル板が立ちはだかっています。

触れ合うことも同じ空気を感じることも無いなかで、マスクをして表情を伝えあうことも難しいなかで、人間にとって必要不可欠なつながりをどうやって保つのか。

「つながりをつくる」ことを仕事とするCAFICに何ができるのか。常に考え続けなければなりません。