オンライン授業と学び
「立命館大生の1割『退学視野』」(2020年8月20日付『東京新聞』)
そんな衝撃的な記事を読みました。立命館大学(京都市)の学生新聞のアンケート調査によると、学部生の2.3%が退学を本格的に考えており、「どうするか考えている」は7.5%。合わせて9.8%の学生が退学を視野に入れているとのこと!
また、「休学を視野に入れている」と答えた学生は25.6%で、なんと4分の1に当たります。
同記事によると、低学年や学費が高い学部の学生は、退学や休学を検討する割合が高い傾向にあり、退学や休学を検討する学生は、ウェブではなく対面授業を希望する人が多かったそうです。
調査を担当した学生は「今の学生がどういう思いなのか、目に見える形で明らかにしたかった。退学や休学を考える学生が多く、驚いた」(同記事)とコメントしています。
私の実感
結果に衝撃は受けたものの、私の実感としては「さもありなん」という感じです。
実は先日、知り合いの大学生から次のような話を聞いていたのです。
「学んでいるというより、課題をこなしているという感じ。友達には会えないし、課題が多すぎてつらい」
「課題で手がいっぱい。夢だった留学もできないし、研修も受けられない。友達にも会えないし、ずっと家にいるから気分も沈みがち」
また、大学で教鞭を執っている何人かからは、こんな話も聞きました。
「コロナが無かったら退学なんて考えなかっただろう学生が、退学すると言い出した。とくに可哀想なのは1年生。ただの1度も大学に来て授業を受けたことがない学生がほとんど。自宅でたったひとり、ひたすら課題をこなすオンデマンド授業やライブ配信授業を受けていたら、それは行き詰まりも感じる」
「地方から来ている学生の中には、オンライン授業なら実家で受けても変わらないと思い、親に相談したら『周囲の目があるから帰ってくるなと言われた』という学生も。周囲に知りあいも無く、コロナで家にこもっているから友達もできない。そんな状態で頑張って学べというほうが無理」
子どもの心身の発達は?
「いつでも、どこでも、同じ質の授業が受けられる」と、オンライン授業のいいところだけがもてはやされ、教育界の救世主のように扱われています。
国は、2000億円以上の補正予算を計上し、2023年度の実現を目指してきた1人1台の学習用端末とネット環境の整備を図る「GIGAスクール構想」を前倒しすると言っています。(コロナで文科省,GIGAスクール構想前倒し,「7月末までに1人1台の実現を」)
遠隔授業も推進しており、遠隔授業に積極的な大学には補助金まで出すそうです(大学等における遠隔授業の環境構築の加速による学修機会の確保)。
もちろん、教育にインターネット環境があることは重要ですし、オンライン授業すべてを否定はしません。利点もたくさんあることは、私も知っています。しかしそれは、あくまでも補完的なものであり、教育の中心に置かれるものではありません。
本来、教育とは、たんに知識を吸収することだけを指すのではありません。仲間の意見に耳を傾けたり、教員の価値観に触れたり、違う意見の人と議論したり、得手不得手があるなかで助け合い、学び合ったりしながら、人格形成まで行うからこそ、「教育」です。
授業だけではない、友人との関わりや他愛も無いやりとりの中で、信頼関係を育てたり、共感能力を育んだりしながら、一生の友をつくっていくことも、人生を豊かに、幸せに生きていくために無くてはならない経験です。
このような体験ができないまま成長することが当たり前になってしまったら。大学ならまだしも、小中学校までそのような状況になってしまったら。
子どもの心身の発達は、果たしてきちんと保障されるのか。心配はつきません。