相談室ブログ,発達障害

近年、発達障害の傾向のあるお子さんの保護者の方から

「特性があるから、中学から私立に行ったほうがいいと思って‥」

というお話を伺うことが増えました。

日頃カウンセラーの立場で、小学校・中学校、公立・私立それぞれで過ごしているお子さん・親御さんと多く接する機会がありますので、思う部分を書いてみたいと思います。

私立だから‘手厚い’?

中高一貫の私立校の中には、「発達特性のあるお子さんも積極的に受け入れています」と全面に出しているところもごく少数あるようですが、大部分の学校はそうではありません。
私立の学校に「高い学費を払っているのだから、手厚いサポートが受けられるだろう」という期待をして入ると、「意外にそうでもなかった」という失望感につながる可能性があるので注意が必要です。

中堅以上、とくに難関校と言われるような学校は、中高一貫の教育を通じて、難関大学に合格者を多数輩出することが学校としてのアピールポイントであったりします。
レベルの高い授業を提供することに対してはプロフェッショナルであっても、‘集団生活への適応が大変なお子さんへのサポート’というのはあまり意識されていないこともありえます。

特別支援教育は公立のみ

公立の小学校には、コミュニケーションについて課題を持つお子さんや、個別での学習サポートが必要なお子さん向けの教室(通称:通級)があり、通常の学級に在籍していても支援が受けられるようになっています。
中学も、公立ではこのようなシステムがあり、特別支援教育担当の教員が各学校に配置されています。

ですが、私立では基本このような担当教員はおらず、教室もありません。お子さんの特性への配慮はある程度汲んでもらえることもあると思いますが、定期的に通常の教室以外の場所で個別での対応をしてもらう、ということは難しい場合が多いでしょう。

複数の先生の意見を参考に

発達特性のあるお子さんの中学受験を検討されている場合、ご本人と関わりのある複数の方の意見を聞いてみることがお勧めです。
担任の先生を始め、学年主任や過去の担任、養護教諭(保健室の先生)やスクールカウンセラー、関わったことがあれば児童精神科の医師・心理士や特別支援・療育の先生の意見も参考になるでしょう。

中学受験の塾や家庭教師の先生は、とにかく受験を勧める、いわば営業の人ですので、中立ではありません。その情報だけに頼りすぎないほうがよいでしょう。

言うまでもありませんが、受験についてはお子さん本人の意志も大切です。しっかりと親子間でコミュニケーションを取りながら、無理のない選択ができると良いかと思います。

相談室ブログ,発達障害

発達障害と呼ばれる子どもが増加の一途をたどっていることが様々なデータで示されています。

発達障害者支援法ができた2004年以来、右肩上り。2006年に発達障害の児童数は7000人余りだったのが、2019年には7万人を超えています。とくに目立つのがADHD(注意欠陥多動性障害)の子どもたちです。10年で6倍になりました。

文部科学省『特別支援教育に関する調査』によると、2020年に障害に応じた特別な指導を通級指導教室などで行う特別支援教育を実施した子どもの数は16万4,693人。前年より3万人近く増加しました。

これにともない子どもへの向精神薬の処方も増えています。
医療経済研究機構が2014年に発表した研究によれば、13歳〜18歳の患者のうちADHD治療薬を処方された割合は、2002年〜2004年と2008年〜2010年を比較すると、2.5倍。抗うつ薬、抗精神病薬はそれぞれ1.4倍となっています。

わかりにくい子どものSOS

一方で、「発達障害の子どもが増加した」というデータに疑問を挟む声もあります。データの取り方や問診中心の診断(判断)等によって、本当に発達障害かどうかわからないのに、診断がついてしまうケースがあることは、常々、指摘されています。

また、発達障害、とくにADHDとされる子どもの“症状”が、虐待などの安心できない家庭環境で育つ子どもの言動ととてもよく似ており、鑑別が難しいということも、よく知られた通りです。

子どもは、自分の育つべき場所が安心・安全でないとき、困ったり、助けてほしいことがあるとき、おとなにSOSを出します。
そのSOSの方法は、必ずしもわかりやすい言葉で発せられるとは限りません。
ときに暴言や暴力、または無言の抵抗のような、おとなには理解しづらい、けれども子どもが今できる精一杯のかたちで表現されることもあります。

その表現方法が、ADHDなど発達障害と呼ばれる子どもたちの症状と似ていることも、少なくありません。

立ち止まって考えてみる

安易な投薬治療は、そうした子どものSOSを押さえ込み、子どもが必死で発しているメッセージを封印してしまうことにもなりかねません。
もしかしたら、子どもの置かれた環境や、学校などの問題があるかもしれないのに、その部分が顧みられることなく、「発達障害だから」と片付けられてしまっているケースがあるかもしれないのです。

「言うことを聞いてくれない」
「どうしてこんなことをするのかわからない」
「なぜほかのこと同じことができないの?」

そんな理解しにくい子どもの言動の裏にあるメッセージ。
「それは何なのか?」と、立ち止まって考えてみてはどうでしょうか。

たとえ発達障害があるとしても、周囲の環境が落ち着いていて、安全で、「自分の味方になってくれるおとながいる」と確信できれば、子どもの“症状(問題行動)”は改善されていきます。

相談室ブログ,心理検査,発達障害

少し前になりますが、「発達障害の基礎知識リンク」の記事で、障害そのものについて簡単にご説明させていただきました。
今回は、その一歩先、発達の偏りがあるかどうかを見るための検査について書きたいと思います。

‘発達の偏りを見るための検査’とは?

現在、発達障害の可能性が大きいかどうかの判断材料として、もっとも一般的な心理検査が「WAIS(ウェイス)」と「WISC(ウィスク)」です。

どちらもウェクスラー式知能検査というもので、年齢によってどちらを受けるかが決まります。
WAISは16歳以上~成人向け、WISCは5~16歳11ヶ月までが対象となります。
ちょうどその境目の16歳の場合はどちらでも受検可能ですが、検査担当者がより適切と思う検査を選ぶことが一般的です。

知能検査で発達障害がわかる?

WAIS・WISCとも知能検査ですので、もともと発達障害を診断するために開発されたわけではありません。ですので、検査の結果が「○○の項目が何点以上なので自閉症スペクトラムの疑いあり」という数値で出るわけではないのです。

では、なぜ知能検査を行うかと言いますと、その方の能力を多方面から測定できるため、その方の能力特性(何が得意で苦手か等)や極端なアンバランスさがあるかどうかを見るのに適しているからなのです。

これらの情報を基として、検査を受けられた方のお悩みやお困りの状況について、‘生まれつきの発達の偏り’の要因が大きそうかどうか、を検査者が検討していくことになります。

検査を受けることの意味

ご自分、あるいはお子様のIQ(知能指数)を知ってしまうのは怖い、という感じられる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、IQという数値そのものだけでなく、特性を知ることによって、「だから自分はこういうことが苦手なんだな」という自己理解につながったり、適切な職業選択につながることもあります。

お子様の場合ですと、周囲の大人の方がどう関わるとよいかヒントが得られたり、適した教育環境を整えてあげるための判断材料ともなり得ると考えられます。

検査の‘その後’も大切に

お子様がある程度理解できる年齢の場合ですと、ご本人に結果をどう伝えるか、あるいは伝えないほうがいいのか、といったご心配も出てくるかと思います。そのような気がかりな点につきましては、事前相談の際に検査担当カウンセラーまでご相談いただければと思います。
CAFICでは、「一つ一つのステップを大切に」サポートしていくことを目指しています。

相談室ブログ,心理検査,発達障害

発達障害という言葉は、ここ数年、ニュース等で取り上げられたり、著名人がカミングアウトしたりと、ずいぶん身近なものになってきたように感じます。

ですが、まだまだ誤解されがちな部分もありますし、「そうかもしれないけどどうしたらいいのだろう」というところで止まってしまっている、という方も多いように感じます。

そもそも発達障害とは

コミュニケーションが苦手である、こだわりが強い・感覚の過敏さがある、集中が続かず要領よく物事を進められない、といったお悩みが代表的なものとして挙げられます。

コミュニケーションの苦手さ・興味の幅が限定される等は自閉症スペクトラム(ASD)、注意散漫さはADHD(注意欠陥多動性障害)の方に多く見られる傾向です。
アスペルガー症候群という言葉も一般的に知られていますが、これは自閉症スペクトラムというカテゴリーに含まれていますので、ほぼ同意語と考えてよいかと思います。

発達障害の原因は?

かつて「自閉症は親の育て方が悪かったのではないか」という誤解がありましたが、最近は正しい理解がだいぶ広まってきたように感じます。
発達障害は、生まれつき持った特性であり、脳の一部の機能に障害があると考えられています。

ですので、発達障害は‘人生の途中で突然発症する’というものではないですし、逆に言いますと根本的な治癒をめざすものでもありません。
その特性を知り、その特性とともにどう日々を過ごすか、どうすればより良く過ごせるか、を考えていくことが重要です。

発達障害の診断

診断は、医師による問診・心理検査・その他の情報(お子さんの場合は保護者の方からの聞き取り等)を総合して行われます。
CAFICは医療機関ではありませんので診断はできませんが、前述の「心理検査」の部分を行うことができます。この検査がどういうものかについては、また別の機会にもう少し詳しくご説明したいと思います。

CAFICでおこなえる支援

お子様の場合は、発達特性があることによって集団生活での適応が難しくなりがちですし、養育される保護者の方の心身のご負担も重くなることが多いと言えます。

CAFICでは、検査だけでなく、保護者の方への心理的サポートや環境調整に関する助言(学校やその他機関とどう関わっていくべきか)等もおこなっています。

おとなの方の場合は、ご自身の特性を把握し、現在お困りの事柄についてどう対応していくか、カウンセリングを通してそのサポートをおこなう形になります。

大事なのは、検査の‘その後’――つまり「その方が自分らしく、よりストレスの少ない日々を過ごせるようになること」ではないでしょうか。